大学の一般教養の講義で「動物の種類を沢山あげよう」と学生に尋ねると、返ってくる答えにはサル、ネコ、リスをはじめ、ヘビ、カエル・・・などの四つ脚動物に、スズメ、ハト、メダカ、アジ、サバなどが加わった脊椎(背骨)をもつ脊椎動物に属する動物の名前が大半を占めます。
通常、脊椎動物以外を「無脊椎動物」とまとめて呼んでいますが、実はこの無脊椎動物のなかには、脊椎動物のグループに相当する大きさのグループ(門)が30以上にも分かれて存在しています。つまり、みなさんが身近に感じている脊椎動物の仲間は、多様な動物の種類の中の30分の1以下にすぎないのです。
「沢山の種類の動物を見たいと考えたら、どこへ行きますか」と尋ねると、「動物園」「ジャングル」「水族館」などの答えが先ず返ってきますが、そこで見られる動物のほとんどは脊椎動物なのです。では、多様な動物門を見るためにはどこにいけばよいのでしょうか。
それは海です。海の動物は水中を泳ぐ魚だけではありませんよ。
海藻の上、海底の泥や砂浜の砂の中、沿岸の磯の石の下や溶岩の割れ目などの様々な場に、多様な種類の動物たちが生息しています。 特に、潮が引いた磯、例えば「浮港の波布比咩命神社下の岩場」や「岡田日の出浜」や「元町弘法浜の脇の小さい磯」でも、干潮の時には様々な動物を簡単に発見できます。
始めは、良く動くヤドカリやカニの仲間(節足動物門)、巻貝やウミウシ類(軟体動物門)ばかりに目が行ってしまうでしょう。しかし、よく目を凝らすと、トゲを持ったウニやヒトデ、ナマコの仲間(棘皮動物門)、イソギンチャクの仲間(刺胞動物門)、石の上をゆっくりと這うように移動するヒラムシの仲間(扁形動物門)、巣穴の中からゆらゆらと触角を延ばしているゴカイの仲間(環形動物門)文字通りスポンジ状のカイメンの仲間(海綿動物門)も見つけることができます。岩一面に広がっている群体のホヤ(原索動物)は、三陸沿岸で養殖が盛んなマボヤの仲間です。
ホヤなどの「原索動物門」は以前、「脊椎動物門」以外の「無脊椎動物」の一つでした。ところが、最近の研究結果から、脊椎があるか無いかは、あまり大きな違いではないことが示され、それ以外の重要な共通点である「背側神経管および脊索を持つこと」によって、これらの二つの「門」は合併し、「脊索動物門」となりました。つまり、ホヤとヒトは、近縁の仲間ということになります(図1)。
「脊索」は原索動物では一生残りますが、脊椎動物では成体になる過程で「脊椎」が「脊索」に代わって形成されます。脊椎動物の脳や脊髄は、背側神経管が発達したものなのです。
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