伊豆大島の特産物一つ、椿油。その椿油の製造に重要な過程が「搾油」です。 搾油は油の品質を左右し、その技術は時代とともに発達してきました。

山崎離宮八幡宮に伝わる長木の図
(一般社団法人 日本植物油協会. 植物油INFORMATION 第85号)
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山崎離宮八幡宮に伝わる長木の図
(一般社団法人 日本植物油協会. 植物油INFORMATION 第85号)

1.はじめに

搾油するための機械には様々な形式があります。 搾油機械の歴史を紐解いていきましょう。

 

図1 搾油のための機構(「製油録」日本農書全集 第50巻)
二本の立木(たつぎ)の間の臼に菜種を入れ、矢と呼ばれるくさびを両側から打ち込む事で圧力をかけていきます。
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図1 搾油のための機構(「製油録」日本農書全集 第50巻)
二本の立木(たつぎ)の間の臼に菜種を入れ、矢と呼ばれるくさびを両側から打ち込む事で圧力をかけていきます。

2.搾油する前処理の加熱の必要性

種子から搾油するために加熱を行います。
種子を加熱することには以下の2つの効果があります。

 

① 細胞膜たんぱく質を変性させて、油を取り出しやすくする。

② 油の粘度を下げる。

 

加熱の仕方は材料によって異なり、菜種の場合では種子を炒ることによって加熱を行います(図2)。一方、伊豆大島で用いられている椿種子では,粉砕後に種子を蒸すことで加熱を行います。

 

図2 菜種油を絞る際の前処理(「製油録」日本農書全集 第50巻)
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図2 菜種油を絞る際の前処理(「製油録」日本農書全集 第50巻)

3.搾油するプレス機構

加熱した種子から油を取り出すために圧力をかけます。昔は圧力をかける方法に「てこ」や「くさび」が用いられてきました。

 

図3 ダビンチの考えた搾油機構
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図3 ダビンチの考えた搾油機構

その後、ねじ機構(スクリュープレス)を用いてさらに大きな力をかける機構(図3)や油圧プレスを用いた機構が作られました。図4に示す玉締(玉締め法「玉搾り」)搾油機は,油圧で石臼を押し上げて材料をつぶして、油を搾りだす方法です。 スクリュープレス等の方法と違って、搾油中に熱が加わることがないため、油の品質が良いといわれています。伊豆大島でも、これと同じ型式のものを用いている製油所があります。

図4 玉絞搾油機
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図4 玉絞搾油機

キーワード

圧力 / 機械 / 搾油 / 玉搾り / ねじ機構